19歳、木工はじめました。タクミの成長物語

高校を卒業したばかりの19歳、学校の成績は中の畳くらいと自虐しつつも、実習だけは妙にキラキラしていた青年がいました。名前は仮にタクミくんとしましょう。(木工だけに、タクミ。ぴったりすぎる)ここからは、そんな彼が木工の世界に飛び込んだ、ちょっと笑えて、ちょっと胸が熱くなる物語です。

実習だけは好きだった男

タクミくんは、勉強は苦手。

テストの点数は中の上くらい、つまりまあまあ普通。

でも実習になると別人のように生き生き。

金属加工でも農業でも調理でも、

とにかく体を動かすことが楽しかった。

その中でも、

木工実習だけはなぜかスッと上手にできた。

「線を越えて切っちゃダメ」

「姿勢が悪いとまっすぐ切れんよ」

先生の言葉は、なぜか木工のときだけ胸に刺さった。

ただし、姿勢を正すのはつらい。

背筋を伸ばすと、なぜか心まで伸ばされる気がして疲れる。

初仕事はしゃもじ研磨

木工の世界に飛び込んだタクミくん。

最初の仕事は、宮島のお土産しゃもじの研磨。

ペーパーでバリを取る、地味〜な作業。

5分後。

「飽きた」

19歳、正直です。

そんな様子を見ていた先輩が、

ニヤッと笑ってこう言った。

「糸鋸、やってみる?」

タクミくんの目が輝いた。

糸鋸は得意。

実習で褒められた唯一の工具だったから。

糸鋸チャレンジ、線の外側を切れ!?

タクミくんは張り切って質問した。

「線の真上を切ればいいんですか?」

すると先輩は首を振る。

「いや、線の外側を切るんよ。

あとでベルトサンダーで仕上げるけぇ」

なるほど。

線の外側を大まかに切るという新ルール。

タクミくんは全集中。

糸鋸の音がリズムよく響く。

カタカタカタカタ

飽きる暇もないほど、夢中になっていた。

まさかの下書き係に任命

糸鋸に慣れてきた頃、先輩がまた提案した。

「次は下書き線を書いてみるか?」

タクミくんは一瞬ひるんだ。

下書きは地味。

目立たない。

なんか裏方の裏方みたいな作業。

でも先輩が続けた。

「この板、高いんよ。

1枚から1個でも多く取れるように工夫してみて」

その言葉に、タクミくんのスイッチが入った。

32個→36個の奇跡

最初の挑戦では、1枚の板から32個。

「まあ、こんなもんか」

と思っていたら、

2回目の挑戦でなんと36個取れた。

4個増えた。

たった4個。

でもタクミくんにとっては、

世界を変える4個だった。

先輩が笑って言った。

「お前、やるじゃん」

タクミくんは鼻高々。

背筋も自然と伸びていた。

次はどんな作業が待っている?

しゃもじ研磨、糸鋸、下書き。

どれも地味だけど、どれも確実に木工の力になっている。

タクミくんは思う。

「次はどんな作業をさせてもらえるんだろう」

ワクワクが止まらない。

姿勢はまだちょっとつらいけど、

木の香りに包まれながら、

19歳の挑戦は今日も続いていく。

家族のひと言

家に帰ると、お母さんが聞いてきた。

「今日どうだったん?」

タクミくんは胸を張って答えた。

「36個取れた」

お母さんはよく分かってないけど、

とりあえず拍手してくれた。

お父さんは新聞を読みながら、

「ほぉ、やるのぉ」と一言。

妹はゲームしながら、

「ふーん、すごいじゃん」と適当。

でもタクミくんは嬉しかった。

家族に話したくなるくらい、

今日の自分はちょっと成長していた。

タクミくん、初めてのベルトサンダーに挑む!

前回、糸鋸で線の外側を切るという高度なミッションをクリアし、

下書きでは 32個 → 36個 の大躍進を遂げたタクミくん。

19歳、木工の世界に足を踏み入れたばかりなのに、

すでに鼻が天井に届きそうなくらい高くなっている。

そんな彼に、ついに次の試練がやってきた。

ベルトサンダーは突然に

ある日のこと。

先輩がタクミくんの肩をポンと叩いた。

「タクミ、次はベルトサンダーやってみるか?」

タクミくんの心の声:(きたーーーー!!)

ベルトサンダー。

それは木工界の高速道路。

削る、整える、仕上げる、なんでもござれの万能マシン。

しかし同時に、「気を抜くと一瞬で削りすぎる」という恐ろしい噂もある。

タクミくんはゴクリとつばを飲んだ。

先輩の説明が妙に怖い

先輩が真剣な顔で説明する。

「いいか、ベルトサンダーはな

削れすぎるけぇ、気をつけんとしゃもじが消えるぞ。」

タクミくん:(しゃもじが消える?そんな漫画みたいなことある?)

でも先輩の目は本気。

どうやら本当に消えるらしい。

姿勢がすべて

「まずは姿勢じゃ。

背中を丸めると、削りすぎるけぇ気をつけぇよ」

タクミくんは背筋を伸ばす。

しかし、伸ばした瞬間にこう思う。

(あ、これ長時間は無理なやつ)

でもやるしかない。

19歳、プライドだけは一人前。

いざ、初削り!

しゃもじを両手で持ち、

ベルトサンダーにそっと近づける。

シュイーーーーン!

ベルトが高速で回っている音が、

タクミくんの緊張をさらに煽る。

「軽く当てるだけでええけぇ」

先輩の声に従い、そっと触れた瞬間

スッ!

木が削れた。

思ったよりもスムーズに、そして気持ちよく。

タクミくん:(おおおおおおおおおお!!

これ、めっちゃ楽しい!!)

危険な香りのする機械ほど、

なぜか男心をくすぐる。

やらかし寸前のハプニング

調子に乗って削っていると、

しゃもじが少し傾いた。

その瞬間

ガッ!

しゃもじがベルトに吸い込まれかけた。

タクミくん:

(あっぶな!!

しゃもじ消えるとこだった!!)

先輩は笑いながら言った。

「ほらな?言ったじゃろ。

ベルトサンダーは油断したらしゃもじ泥棒なんよ」

タクミくんは深くうなずいた。

仕上がりに感動

慎重に、丁寧に、姿勢よく。

タクミくんは集中して削り続けた。

仕上がったしゃもじは、

まるで新品のようにツルツル。

先輩が言った。

「お、ええじゃん。初めてにしては上出来よ」

タクミくんの心の声:

(よっしゃああああああ!!)

家に帰ったら絶対家族に自慢しよう。

そう心に決めた。

家族の反応

家に帰ってしゃもじを見せると、

お母さんは目を丸くした。

「え、これタクミが削ったん?

めっちゃきれいじゃん!」

お父さんは新聞をめくりながら、

「ほぉ、職人の顔になっとるのぉ」

妹はゲームしながら、

「しゃもじ削るって何?でもすごいじゃん」

タクミくんは照れながらも嬉しそう。

今日もまたひとつ、木工の階段を登った。

そうこうするうちに

木工の世界に飛び込んで数週間。

糸鋸もベルトサンダーも経験し、

少しずつ職人の顔になってきたタクミくん。

しかし、彼の成長を陰で支えているのは、

なんといっても 先輩との絶妙な掛け合い。

そんな二人のちょっと笑えるやり取りが続きます。

しゃもじ研磨でのひと言

タクミくん、しゃもじの研磨に飽きてきた頃。

先輩が横から覗き込みながら言った。

「タクミ、飽きたじゃろ?」

タクミくんは正直に答える。

「はい。飽きました」

先輩は笑いながら、

「正直すぎるわ!

でも、飽きたら飽きたって言うのはええことよ。

じゃあ糸鋸やってみるか?」

タクミくんの心の声:(飽きたのバレてたんか!)

糸鋸の線の外側問題

糸鋸に挑戦したときのこと。

タクミくん:「線の真上を切ればいいんですか?」

先輩:「いや、外側じゃ」

タクミくん:「外側?なんでですか?」

先輩:「真上切ったら、しゃもじがひとまわり小さくなるじゃろ」

タクミくん:「あ、確かに」

先輩:「お前、家のしゃもじ全部ミニサイズにする気か?」

タクミくん:「してません!」

二人のやり取りに、周りのスタッフがクスクス。

下書き線チャレンジでの攻防

先輩:「タクミ、次は下書き線書いてみるか?」

タクミくん:「え、地味じゃないですか?」

先輩:「地味じゃけど大事なんよ。

この板、高いけぇな。1個でも多く取れるように工夫してみぃ」

タクミくん:「分かりました。やってみます」

(30分後)

タクミくん:「先輩!36個取れました!」

先輩:「おお、やるじゃん!

32個から4個増えたら、そりゃもう職人見習いじゃ」

タクミくん:「ほんとですか!」

先輩:「まあ、まだ見習いの見習いくらいじゃけどな」

タクミくん:「どっちですか!」

ベルトサンダーでの恐怖体験

タクミくんがベルトサンダーに挑戦したとき。

先輩:「気をつけんと、しゃもじが消えるぞ」

タクミくん:「消える?」

先輩:「うん。跡形もなくなる」

タクミくん:「そんなホラーみたいな」

(数分後、しゃもじが吸い込まれかける)

タクミくん:「あっぶな!!」

先輩:「ほらな?言ったじゃろ。

ベルトサンダーはしゃもじ泥棒なんよ」

タクミくん:「もっと早く言ってください!」

先輩:「今言ったじゃん」

タクミくん:「いや、もっと危険です!みたいに!」

先輩:「危険です、って言ったら余計緊張するじゃろ?」

タクミくん:「それはそうですけど!」

休憩時間の謎アドバイス

休憩中、先輩が突然言った。

「タクミ、木工はな、木と会話するんよ」

タクミくん:「木と会話?」

先輩:「そう。木が『ここ削って』って言うんよ」

タクミくん:「聞こえませんけど?」

先輩:「まだ若いけぇな。

そのうち聞こえるようになる」

タクミくん:「それ、職人の境地すぎません?」

先輩:「まあ、ワシも聞こえんけどな」

タクミくん:「聞こえんのかい!!」

先輩とのやり取りは、

ツッコミどころ満載で、笑いも絶えない。

でもその中には、

木工の技術や心構えがしっかり詰まっている。

タクミくんは思う。

「先輩、ちょっと変だけどめっちゃ頼りになる」

そして今日もまた、

先輩の一言に振り回されながら、

タクミくんの木工修行は続いていく。

ついにこの日が来た

タクミくん、19歳。

木工の世界に飛び込んで数週間。

糸鋸もベルトサンダーも経験し、

先輩との掛け合いにも慣れてきた頃——

先輩が突然こう言った。

「タクミ、今日は二人で現場行くぞ」

タクミくんの心の声:

(え、二人きり!?

先輩と!?

逃げ場なし!?)

でも、どこかワクワクしている自分もいた。

現場へ向かう軽トラの中。

タクミくんは緊張でガチガチ。

先輩は運転しながら鼻歌を歌った。

タクミくん(心の声):

(しゃべったほうがいいのか…?

でも変なこと言ったら怒られるかも…

いや、怒られはしないけどツッコまれる…)

沈黙が続く中、先輩が突然言った。

「タクミ、緊張しとるじゃろ?」

タクミくん:「はい…ちょっとだけ…」

先輩:「大丈夫よ。

ワシも最初の現場は緊張して、

工具箱忘れて帰ったけぇ」

タクミくん:「それはダメじゃないですか!」

先輩:「まあ、そうなんよ」

タクミくん:「開き直らないでください!」

車内に笑いが広がり、少しだけ緊張がほぐれた。

現場に着くと、先輩が言った。

「タクミ、まずは段取りじゃ。

何から始めると思う?」

タクミくん:「えっと…掃除ですか?」

先輩:「正解!

現場はキレイじゃないと仕事が進まんけぇな」

タクミくんは張り切って掃除を始める。

しかし、ほうきを振り回しすぎて木くずが舞い上がる。

先輩:「タクミ、木くずが雪みたいになっとるぞ」

タクミくん:「すみません!やりすぎました!」

先輩:「まあ、勢いがあるのはええことよ」

タクミくん(心の声):

(褒められたのか、注意されたのか分からん…)

二人きりの作業はツッコミの嵐

作業が始まると、先輩が言った。

「タクミ、これ持っとって」

タクミくん:「はい!」

(持ち方がぎこちない)

先輩:「タクミ、それは持っとるじゃなくてつまんどるじゃ」

タクミくん:「つまんでましたか…!」

先輩:「まあ、かわいいけぇ許す」

タクミくん:「かわいいって言わないでください!」

糸鋸の腕前を見せるチャンス

先輩:「タクミ、ここ糸鋸で切ってみぃ」

タクミくん:「任せてください!」

(スイスイ切り進める)

先輩:「お、ええじゃん。

ワシより上手いんじゃないか?」

タクミくん:「ほんとですか!」

先輩:「まあ、ワシが本気出したらもっと上手いけどな」

タクミくん:「どっちですか!」

ベルトサンダーでのしゃもじ泥棒再び

先輩:「タクミ、ここベルトサンダーで仕上げるぞ」

タクミくん:「しゃもじ泥棒には気をつけます!」

先輩:「今日はしゃもじじゃないけぇ大丈夫よ」

タクミくん:「じゃあ何が消えるんですか?」

先輩:「お前の自信が消えるかもしれん」

タクミくん:「やめてください!!」

(実際はうまく削れた)

先輩:「お、今日は自信残ったな」

タクミくん:「残りました!」

帰り道のちょっと大人な会話

帰りの車内。

先輩がふと真面目な声で言った。

「タクミ、今日はよかったよ。

現場はな、技術だけじゃなくて気持ちが大事なんよ」

タクミくん:「気持ち…ですか?」

先輩:「そう。

丁寧にやろうとか、失敗しても諦めんとか、

そういう気持ちが仕事を上手くするんよ」

タクミくんは静かにうなずいた。

心の中で思う。

(先輩、いつもふざけてるけど…

めっちゃいいこと言うじゃん…)

家に帰ると、お母さんが聞いた。

「どうだったん?」

タクミくん:「先輩と二人で現場行きました!」

お母さん:「おお、すごいじゃん!」

お父さん:「ほぉ、現場デビューか。

ワシの若い頃より早いのぉ」

妹:「先輩と二人って、デート?」

タクミくん:「違うわ!!」

家族の笑い声が広がる。

タクミくんは思った。

今日、自分はまた一歩職人に近づいた。

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